ワガノワ・メソッドとロシア・バレエ

メソッドとは ― 「やり方、方法、手段」の本来の意味から発し、

音楽やバレエでは「教育方法/教育プログラム」のことを指します。

動きの型やスタイルだけではなく、独自のバレエ教育法に基づいた

教育システムの事を “メソッド” と言います。

 

ワガノワ・メソッド

ワガノワ・メソッドとは、ロシア(ソビエト)にてバレエ芸術に

長年貢献したロシア・ソビエト連邦社会主義共和国人民芸術家である

バレリーナ、また革新的で、偉大なるバレエ教師である、

アグリッピナ・ヤコーヴレヴナ・ワガノワが考え出したメソッドです。

 

「イタリアで生まれ、フランスで育ち、ロシアで成熟した」

といわれるバレエは、長い年月の中で、

イタリア派の跳躍力や回転力などのテクニック、

フランス派の優雅な腕と上体の柔らかい動きを調和させながら

ロシア独特の民族性や感情表現を取り入れ発展してきました。

 

ロシア・バレエは、舞踊芸術に触れるだけではなく、

個々の個性を尊重して、素晴らしい作品全体を創り上げるために、

ダンサー=俳優・女優としての演技も学び、磨きあげながら、

また、踊りの一つ一つの動きを正確に説明できるように、

創造的なクラシック・バレエのレッスン教授法を創りだしていきました。

 

そのロシア・バレエの教授法の先駆者となったA.ワガノワは、

そうして長年に渡ってつちかわれてきた教授法を基に、

研究や実践を積み重ねながら、世界中で基本とされている

ワガノワ・メソッドを創り上げていきました。

 

そのメソッドでワガノワは、

一番弟子のマリナ・セミョーノワをはじめ、

ガリーナ・ウラノワやナタリア・ドゥジンスカヤ、

ワガノワの最後の生徒であったイリーナ・コルパコワら、

バレエ史に名を残すダンサーを次々と育て上げました。

 

特にセミョーノワとウラノワはボリショイ・バレエ学校で、

ドゥジンスカヤはワガノワ・バレエ・アカデミーで、

優れたバレエ教師として多くの著名ダンサーを送り出し、

ワガノワ・メソッドの良き後継者となりました。

 

ワガノワ・メソッドの最大の特徴は、

背中と上体を正しく構えて使い、自由自在に動けるようにする事です。

その最大限に背中を使う機能を養うことによって上体が安定し、

どんなに高度で複雑なテクニックでも、つねに自分自身を

コントロールしていると感じながら踊ることができるのです。

 

その上体と背中を正しく使い、自分で体をコントロールする

アプロン ― 体を安定させてバランスを保つこと ― を、

当時この概念を舞踊教育に導入したのは、A.ワガノワだけでした。

 

一つ一つの動きを正確にとらえ、しっかりと身につけながら、

より高度なテクニックを段階的に完成させていくこと;

すべての動きを音楽と結びつけて、最後まで体全体で歌いきること;

そして、厳しくても必要なバレエの規律を身につける実践的な教えと

理論を絶妙に組み込んで、熟考の末に創り上げたレッスン計画を基に、

誰もが理解できる普遍的なバレエの法則として、

ワガノワ・メソッドのカリキュラムが確立されていきました。

 

そして1934年に「クラシックバレエの基礎」という教則本を出版し、

ワガノワは、世界中に新しい革新的なバレエの教授法を広めました。

そこから始まり、現在ではクラシック以外にも、キャラクターダンス、

演技法、ヒストリカルダンス・宮廷舞踊、民族舞踊、デュエット等の

多くの教則本が出版され、実践と理論をもって総合舞台芸術である

バレエをより良いものへと進化させてきたのです。

 

簡単な動きから 難しい動きへ

踊りのテクニックは、いきなりその完成形を学ぶのではありません。

どんなに難しいテクニックも、一つ一つ分かりやすく分解していくと、

すべて基本の動きが組み合わさったものになります。

 

その一つ一つの基本であるパを、まずは正確に習得し、

そして、それがやがて高度なテクニックにつながることを

意識して学んでいく ― その過程が上手く組み込まれ、

成長過程毎のカリキュラムが確立されている、とても素晴らしい

レッスン・プログラムがワガノワ・メソッドにあります。

 

ところで、クラシック・バレエの伝統を守ってきたワガノワですが、

レニングラードの劇場バレエ団の芸術監督として就任した頃、

愛するクラシック以外の舞踊である、当時(1930年代)としては

革命的なキャラクターダンスを多く取り入れて創られた作品も

心から受け入れ、細かい点をさらに練り上げてバレエ作品の構想を

最大限に表現することを求めました。

そうして初めに出来上がった新しい”ドラマ・バレエ”が、

バレエ「パリの炎」です。

 

ワガノワ式の鋼鉄のアプロンや身体の軸を見つけること、

トゥールや跳躍をする時には両腕でフォルス(力を蓄える)を

使うことなどを女性だけではなく実際に直接は習っていない

男性舞踊手達も身に付けていったと言われています。

また、演技の中にクラシックとキャラクターが融合した、

新しく高度な舞踊のスタイルを見出したレニングラード・バレエは

様々なバレエ作品を生み出し、多いなる発展を遂げていったのでした。

 

ミニアチュールスタジオでは

基本的には、伝統的なワガノワ・メソッドに基づいた

レッスンを行っていますが、それだけではありません。

広大なロシアには、ワガノワの他にも、

日本でも有名なメッセレール等、とても素晴らしい

独自のバレエ教授法を残しているバレエ教師が多くいます。

 

バレエ教師として基本的に考慮すべき点は、

生徒達が一つ一つのバレエの動きを理解して習得していく為には、

一つの面からのアプローチだけでは必ず全員が分かるわけではない

ということです。

 

その為、ミニアチュールスタジオでは、より個人個人に合う

指導教育ができるように、多様なロシア・バレエの教授法と、

そのアプローチ法をふんだんに取り入れて、レッスンを行っています。

たくさんの引き出しの中から、生徒それぞれに合うアプローチ方を選び、

それを駆使して、素敵なバレリーナを育てたいと思います。

 

 

バレエ・メソッドの種類

バレエの場合、メソッド毎に基礎技法に違いがあり、そのメソッドで育ったダンサー及びその踊り方を「~派」と総称する場合があります。

 

◇チェケッティ派 Cecchetti Style

エンリコ・チェケッティ(1850 – 1928)が推進したクラシック・バレエの基礎技法で、彼と彼の弟子達によって広められた。現在は主にアメリカで採用されているが、ロシア系のバレエと若干のポジション、技法上の違いがある。 チケッティの名を冠したこの有名なバレエ教授法は、イタリア派の特徴ともいうべき、強力な回転と跳躍を軸とした高度で華やかな技術を特色とする。

 

◇ブルノンヴィル派 Bournonville Style

オーギュスト・ブルノンヴィル(1805 – 1879)の振付作品に見られるバレエ技法の特色を継承したスタイルで、主に彼の活躍した北欧デンマークで今日も盛ん。独特の優雅さ、美しさに定評がある。

 

◇レガット派 Legat Style

ニコライ・レガット(1896 – 1937)によって提唱されたクラシック・バレエ技法で、彼がソ連を離れたロンドンに開いたスクールを中心に広まった。他の派と若干のポジション、技法上の違いがある。

 

◇ワガノワ派/ワガノワ・メソッド Vaganova Style/Method

アグリッピナ・ワガノワ(1879 – 1951)が開拓したバレエ教育法で、同女史がソ連時代にレニングラード舞踊学校(現ワガノワ名称ロシア舞踊アカデミー=通称ワガノワ・バレエ学校)で推進して以来、世界的に広まった。単に教育プログラムのみならずポジション、技法等踊り方に他の派と若干の違いがある。また独自のワガノワ・メソッド教授資格ディプロマを発行している。同じワガノワ・メソッドに基づいていても、モスクワのボリショイ・バレエ学校/バレエ団と、サンクト・ペテルブルグのワガノワ・バレエ学校/マリインスキーでは踊り方などに若干の違いがある。

 

◇ISTD <インペリアル・ソサエティー・オブ・ティーチャーズ・オブ・ダンシング> Imperial Socity of Teachers of Dancing

1904年設立の英国舞踊教師協会で、独自の教師資格ディプロマを発行している。

 

◇RAD <ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンシング Royal Academy of Dancing

本来1920年に設立された英国舞踊協会の名称であるが、現在は英国ロイヤル・バレエ学校等が推進するバレエ教育プログラムを指す意味でもっぱら使われ、履修者に対して独自の進級制度によるディプロマを設けている。

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